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鎌倉2

和田塚の駅を降りて長谷の方へ少し歩くとうなぎ屋がある。
つる屋といってかつて川端康成などの鎌倉文士が通った店である。
今日にも良質な店として名を残しており、予約をしなければ昼時を過ぎる程度に待つか、メ門前払いとなることもある。
以前から目をつけていたのではあるが、仕事の都合もあり足が向かなかった。
しかし此度は特殊な事情で四連休を賜ったので、鎌倉を散歩しながらうなぎを食べるという御機嫌な旅程を思いついた。

二年ぶりの小町通りは修学旅行生で賑わっていた。
通り沿いのイワタコーヒーにも行きたかったことを思い出し、うなぎの後に寄ることを決めた。

江ノ電に乗り、和田塚駅からつる屋へ向かったが、ノロノロしていたら正午となってしまった。
二年前は惜敗したので嫌な予感がよぎったけれど、なんとか二時半に入れることになった。
待ち時間には鎌倉文学館と長谷寺へ行くこととした。

鎌倉文学館は小高い丘の上にある。
坂の始まりが文学館の敷地の始まりで、少し踏み込むと辺りが木々に覆われ日陰になる。
陽の光が殆ど届かない暗い道の両脇は鎌倉文人達の歌と俳句が小さな碑文となって立ててある。
「大海の磯もとどろに寄する浪われてくだけて裂けて散るかも」
この歌、下の句の畳みかける表現が、まさしく波の様相という気がしてとても好きだな。

坂を登ると文学館である。
外見は洋館と呼んで相違ないが、屋根は青色の瓦葺きで不思議な感じがした。
展示室のある二階は洋風に設えてあるが、三階は畳に障子の部屋であるとみた。
最も三階は公開されていないため、外から眺めたところ、そのようであったというだけであるが。
元々前田の殿様の別荘であり和洋折衷の建物だったが、焼失復旧され現在の洋風の佇まいとなったそうだ。

館内には文人の直筆原稿が小規模にまとめられている。
作品も初期装丁のものが並べられていて見ているだけで楽しかった。
大抵表題しか書いていない。
ということは、どんな内容だろうと考える想像力というのは完全に私のものであるから、私の持っている人生観がそのまま本を手にとった時の感情になる、という気さえした。

(中断)
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